対等な当事者を前提とする契約形態ですが、実際には労働者を雇用する実態がありながら、労働者保護の法律の適用を免れるために、「業務委託契約」の名称で偽装することがしばしばあります。実態として、支配従属関係があれば名称にかかわらず労働契約と判断されます。
実際の時間外労働や休日労働の有無・長短にかかわらず、残業代として一定額が支給される契約における賃金のことをいいます。この制度が適法とされるためには、同契約の従業員への周知の義務、残業代と時間の明確な記載などの条件を満たす必要があり、条件に欠けると残業代は支給されなかったものとされます。
また実際の時間外労働時間数で計算した割増賃金が固定残業代を超過すれば、その超過分を別途に支給しなければなりません。
裁量労働制とは、業務の性質上、業務遂行の方法を大幅に労働者自身に任せなくてはならないために、業務遂行の手段や時間配分について使用者が具体的な指示をしない労働時間の制度です。この場合、あらかじめ労使協定で決められた時間だけ労働したものとみなされるので、実際に、労働者はその時間を超えて労働しても残業代は請求できません。事実上長時間労働を強いられ、それに見合う賃金が支給されないという弊害があるため、現在は、専門業務型と企画業務型の2種類が認められています。
就業規則で定められた所定労働時間を超えて実際の労働時間が残業時間となります。超えた時間数に応じた残業手当の支払いが必要となりますし、労働基準法で定める8時間を超えた場合には割増賃金の支払いが法律上の義務となります。
就業規則は、使用者が従業員の労働条件や服務上の規律、懲戒などを定めたものですが、 常時10人以上の従業員を使用する使用者は、労働基準法により、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出なければならないとされています。就業規則を変更する場合も同様に、所轄の労働基準監督署長に届け出なければなりません。
なお、就業規則の作成または変更にあたっては労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見を聞かなければならす、作成された就業規則について従業員に対しての周知義務があります。
専門業務型の裁量労働の場合、導入が認められる業務の種類が法令で特定されています。現在19の業務が特定されています。
変形労働時間制とは、一定の単位期間(1ヶ月以内、1年以内)について、週あたりの平均労働時間が週法定労働時間の枠内に収まっていれば、1週または1日の法定労働時間の規制を解除する、つまり残業手当を支払う義務がなくなることを認める制度です。労働者の生活の不規則化、収入の減少などの影響がありますので、あらかじめ各日の労働時間(始業時間、終業行時間)を決めておく等の要件が課せられています。
労働基準法で規定されている労働時間の上限をいい、原則として週40時間、1日8時間です。ちなみに所定労働時間は、会社が法定労働時間の範囲内で自由に定めることができ、就業規則に記載することとなります。
使用者は、労働者の労働時間を把握して管理することが原則ですが、出張や外回りの営業のように事業場外での勤務で使用者の具体的な指揮監督が及ばないような場合、労働時間の算定が困難になる場合が生じます。労働基準法は、このような場合に合理的に対処するために、労働時間をみなし制により算定することができるようにしています。ただし、残業代の支払いを免れるために悪用される危険もあり、この制度が適用されるのは、あくまで客観的にみて労働時間の算定が困難な場合で、使用者の具体的な指揮が及ぼされない例外的な場合に限られます。
この制度は、企業が倒産したために賃金や退職金が支払われないまま退職した労働者に対して、その未払賃金の一定範囲(退職前6ヶ月以内の賃金の80%)について独立行政法人労働者健康福祉機構が事業主に代わって支払う制度です。
事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、そのような労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者(従業員代表者)と使用者との書面による協定のことです。たとえば、時間外、休日労働は、本来、労働基準法によって許されないのですが、このような協定を結ぶことによって規制が解除されます。
労働基準法などで定める最低労働基準等の遵守について、事業者等を監督することを主たる業務とする国の機関です。労働災害についても取り扱います。
労働基準監督署は、事業場に立入って調査をし、法違反等があった場合には是正勧告や是正命令を出して指導を行います。
労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善、また経済的・社会的地位の向上を主たる目的として組織する団体をいいます。企業別・職業別・産業別などの形態があります。
労働契約(雇用契約もほぼ同じ意味)は、労働者が使用者の指揮命令の下で労務を提供し、使用者がこれに対して賃金を支払うことを約束する契約です。契約自由の原則と言って、一般には契約の内容は当事者が自由に決めることが出来ますが、労働契約に対しては、労働者の保護を図るために労働基準法や労働契約法が適用されて契約の自由を規制しています。
裁判所による手続きですが、解雇や賃金未払いなどの労働者と使用者の争いを、訴訟よりも早く、柔軟に解決するために2006年から導入された制度です。使用者、被用者のそれぞれの専門家である労働審判員と、裁判官が務める審判官の計3人でつくる「労働審判委員会」が、双方の話を聞いて、原則3回以内の期日で解決を図ります。 調停が成立しなかった場合は、委員会が審判を示し、確定すれば裁判上の和解と同じ効力を持ちますが、当事者から異議が出されると通常の訴訟手続きに移行します。
労働者の定義は様々ですが、労働基準法上の労働者が大切です。なぜなら労働基準法上の労働者が、労働基準法の保護を受けるからです。そして、労働基準法第9条は、「労働者とは、職業の種類を問わず,事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」とされています。
使用者が従業員に時間外または休日に労働させる場合に支払わねばならない割増の賃金です。労働基準法では、1日8時間を超える時間外労働には通常の賃金の2割5分以上の割増率、午後10時から午前5時までの深夜労働には2割5分以上の割増率、休日労働に対して3割5分以上の割増率で支払う必要があります。
私たちは、1968年の開設以来、労働者の皆様の権利を守るためことを活動の柱とし、多くの労働事件に取り組んできました。現在も(特に労働者側の)労働問題を専門とする弁護士が数多く在籍しており、残業代請求についても実績を重ねてきました。
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