相談事例
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【信用保証協会からの求償】
会社が信用保証協会を使って銀行から借り入れをしました。その際、社長である私も連帯保証人になっています。その後、会社は休眠会社になっていまい、長く支払いをしていません。保証協会から私に債務の支払いを求められています。
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信用保証協会は、銀行の会社に対する債権を保証する会社で、あなたと同じ保証人の立場になります。信用保証協会が銀行に債務を支払うと、銀行に代位して会社に請求できるだけでなく、共同保証人であるあなたに対しても支払いを求めることが出来ることになります。
しかし、保証人はあくまでも主たる債務者の債務を保証するものです。会社は休眠会社で長く支払いをしていないようですね。そのような場合、消滅時効を主張できる場合がありますので注意しましょう。消滅時効の期間は原則10年ですが、商売上の債権は5年です(但し、特別の短期消滅時効の定めもあります)。ですから、会社の主たる債務が時効消滅している場合、あなたとしては保証債務も消滅していると主張できるでしょう。
また、本件の場合、保証協会もあなたも同じ保証人の立場です。会社の債務が消滅時効に係っていなかったとしても、保証会社があなたに対して長く訴訟や差押えなどの時効中断手続を取っていなかった場合、別途消滅時効を主張する余地があります(最高裁平成27年11月19日判決)。
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【債務の整理について】
借入先に対する返済が大変です。どうしたらいいでしょうか。
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このような場合にとりうる方法としては、①任意整理、②個人再生、③破産が考えられます。
①は、相手方との交渉によって、1回当たりの返済額を減額してもらうなどして、原則として、債務の全額を支払う方法です。
②は、裁判所の手続きを通じて債務額を一定割合まで圧縮し、その額を分割(原則3年間)で弁済していく方法です。(個人事業主の場合になります。会社の場合は、下記の【民事再生】をご参照ください)
③は、裁判所の手続きを通じて、資産があればそれを処分し、債権者に分配(配当)する方法です。
どの方法がふさわしいかは、債務の総額、資産の総額、毎月の収入と支出の状況などを見極めて決めることになります。
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【会社の破産と個人の責任】
会社の経営状況が悪化しており、破産を検討しています。会社が破産すれば、社長である私個人の資産はすべて取り上げられるのでしょうか。
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会社と個人とは別個の法人格ですから、会社の破産によって処分の対象になる財産は会社の財産に限られます。
ただし、会社の債務につき社長個人が保証人になっている場合は、社長個人に保証債務があるため、その支払いのために個人の資産を処分する必要が生じます。
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【新株発行】
会社の債務返済の資金繰りのために社債の発行ではなく、新株発行による資金調達を検討していますが、新株発行により、会社を誰かに乗っ取られてしまう危険はありませんか。
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社債発行の場合は、いずれは返済(償還)をしなければなりませんが、新株発行は返済を要しないため、有力な資金調達の手段と言えます。
新株発行により、株主構成が変わり、現経営陣の経営の自由度が脅かされる可能性があります。株主の重要な権利の一つに議決権があるからです。
このような事態を避けるため、定款の定めがあれば、議決権が制限された株式を発行することができます。
ただし、会社の経営に口を出す権利がない株式ですから、そのような株式を好んで引き受けてくれる人がいるかどうかが問題となり、また、仮に引き受けてくれるとしてもそのような株式の価格は低めに設定せざるを得ず、資金調達という観点からは効果がやや乏しい結果になることもあるでしょう。
したがって、新株を発行する場合は、メリット、デメリットを十分に考慮する必要があります。
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【民事再生】
会社の債務を整理する方法として、破産以外に民事再生があると聞きましたが、どのような手続きですか。
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破産が、財産を処分して債権者に配当し、会社を清算する(会社を消滅させる)手続きであるのに対し、民事再生は、会社(会社に限定されるわけではありません)を再建してその収益の中から債権者に弁済をすることにより会社の存続を図る手続きです。
手続きの流れとしては、民事再生申立を受けて、裁判所が保全処分命令を出すとともに監督委員を選任し、その後は監督委員の下で手続きが進められ、債権者集会を経て、再生の当否が決定されます。
現経営陣が必ずしも交代することなく会社を存続させることができることがメリットですが、債権者の理解と協力が不可欠であることから、申立に当たっては、特に大口債権者の理解を得られるかどうか、事業を継続することにより利益を上げることができるかどうかの見通しを立てることが必要となります。