分譲マンションでは、持ち主達が管理組合を組織し、マンションの管理について総会決議を経るなどして決定していきます。しかし、沢山の住人がいる中での合意形成は、中々難しいものです。総会で決議しても、異議を唱える方がいらっしゃる場合、管理組合としてはどのような対応ができるでしょうか。
マンションは、おおざっぱにいって「共用部分」と「専有部分」で構成されています。「専有部分」は室内のことで、それ以外の建物の部分は、「共用部分」となり、勝手に取り替えたりはできません。意外に思われるかも知れませんが、各居室の玄関ドアも「共用部分」です。
これからご紹介する裁判例は玄関ドアにかかわるものです。
とあるマンションの管理組合は、玄関ドアの美観維持のため、扉の外側の改修工事を計画し、総会で工事の実施を決めました。ドアフィルムを貼る程度の簡単な工事でしたが、工事にあたって2時間程度ドアを開けておく必要があり、工事には居住者が立ち会う必要がありました。ところが、ある居住者は、工事反対の姿勢から、工事への協力を拒否しました。
困った管理組合は、居住者を被告として、改修工事への協力義務の確認と改修工事に対する妨害禁止、訴訟に要した弁護士費用の支払いを求める裁判を起こすこととし、総会の議決を経て、東京地裁に提訴しました。
平成27年2月16日に言い渡された判決では、分譲マンションのような区分所有建物の持ち主は、規約及び集会決議に拘束されるとして、被告に対して、改修工事への協力義務と妨害の禁止を命じました。更に、このマンションの規約では管理組合が区分所有法57条から60条までの規定に基づいて必要な措置を講じる場合、弁護士費用を含む訴訟費用を当該区分所有者の負担とする旨の規定がありましたので、裁判所は併せて被告に対し、弁護士費用55万円(着手金40万円、成功報酬15万円)の支払いを命じました(判例時報2267号;東京地方裁判所平成27年2月16日判決)。
判決からは、被告が反対した実際の理由がどういうものだったのか今ひとつわかりませんが、訴訟になるに前に解決できなかったのかと思います。居住者にしてみれば、かたくなな反対が高くついてしまったと言えます。他方で、管理組合としては同種の事案の解決方法として参考になるものと言えるでしょう。ただし、本件では前提となる総会決議の有効性も争われています。早い段階から弁護士に相談をしながら進められて行った方が得策でしょう。