私の依頼者は、店舗の内装工事業者の方でした。はじめて取引する元請業者の指示どおりにブティックの工事を完了したのに、終了した途端に、「タイルの目 地やガラスが汚れている」「ビスの打ちかたが悪い」などさまざまなクレームを付けられ、残代金を払ってもらえないとの相談でした。明らかに請負代金の減額 を狙った不当なやりかたでした。
私は、元請業者の施主に対する請負代金債権の仮差押の手続をとるとともに訴訟を起こしました。
建築関係紛争は、専門性が高く、裁判官のみでは工事の不備の理解が難しいので、大阪地方裁判所では、建築関係の専門部をおき、一級建築士などの専門家を 入れた調停委員会で審理していく方法がとられています。
本件では、裁判官や一級建築士の方は、営業時間前の午前9時に対象の店舗を実際に見にきてくださり、現場での質問で理解を深めてもらいました。調停委員会から出された意見書は、工事の瑕疵はなかったという私たちの言い分を95%以上認めてくれるもので、完勝に近い結果で、元請業者も、全面的に 非を認めて残代金を支払うという解決となりました。自分の丁寧な仕事に自信をもっている依頼者の誇りが守られ、また理不尽なことに屈しないという意思を貫 くことができてよかったと思いました。