反貧困ネットワーク交流会の報告 2008年6月18日 横 山 精 一
新自由主義により、強い者はますます強くなり、弱い者はますます弱い立場に追い込まれています。その為に、その日の生活すらできない人々が、多数、見られるようになりました。これは、ほんの25年程前によく言われた「1億総中流時代」とは、全く異なる状況です。
その中で、まずは、毎日を安心して暮らせるよう、サポートできるようにすることができないか、そのような思いから、私たちの法律事務所から、「反貧困ネットワーク」の呼びかけを行ってきました。
この呼びかけに答えて、多数の団体、個人から賛同を得、これまでに2回、「反貧困ネットワーク」の例会を開きました。以下、その報告をします。
1 第1回例会
日時 2008年4月7日(月)午後6時30分~9時
場所 きづがわ共同法律事務所会議室
参加者 11団体15名及びきづがわ共同法律事務所所員
当日は、「ネットワーク」設立の趣旨と、各団体での、住民の生活をめぐる活動の状況について報告がされ、今後、継続して、ネットワークを開催することが確認されていました。
2 第2回例会
日 時 2008年6月11日(水)午後6時30分~9時15分
場 所 きづがわ共同法律事務所会議室
参加者 9団体11名及びきづがわ共同法律事務所所員
テーマ (1)不動産の保有と生活保護の活用、リバースモーゲージ制度
(2)移送費問題
(3)就労可能性(補充生原則)
当日は、以上の3つの論点について、弁護士から報告をし、経験・意見交流を行いました。
いわゆる水際作戦として、生活保護の申請自体を認めない傾向については、申請の意志があり、住所、氏名が明らかであれば、申請を拒むことができないことを出発点として、就労可能性に関する準備、不動産を保有しながら生活保護を活用する基準、リバースモーゲージを理由に生活保護の利用を制限しようとすることに対する対応等につい
て、貴重な意見が出されました。
自宅等の不動産を持ちながら生活保護を活用することは、従来から認められてきました。ところが、2007年4月から、新貸付資金制度(リバースモーゲージ)が導入され、65歳以上の人がいる世帯で、500万円以上の不動産を保有している場合には、まず
は、生活費をまかなうために借金をしなければならないよう運用されてきました。これは、従来できた生活保護の利用を制限するものであり、利用存権が侵害されるものであること、また、実際の運用上も、制度が導入されて1年以上経つにもかかわらず、ほとんど活用がされていない実態が報告されました。
また、水際作戦の中でよく口実とされる、「就労可能性」についても、この問題に関する林訴訟の名古屋地裁判決、名古屋高裁判決を検討しました。これらの裁判例では、「就労可能性」を判断するためには、「申請者が稼働能力を有する場合であっても、・・・、申請者にその稼働能力を活用する意志があるかどうか、 申請者の具体的な生活環境の中で実際にその稼働能力を活用できる場があるかどうかにより判断すべき」であるとして、生活保護を利用しようとする人が、働く 能力があり、働く意志をもっていても、現実的にそれを活用できる場がなければ、「就労可能性」がないと判断しています。現在、働く人をめぐる環境は厳しく、とりわけ、中高年者に対しては、働きたくとも働く場がありません。そのような人には、セーフティネットとしての生活保護の制度趣旨から、その活用を制限すべきではないとこの裁判例が明言しています。
また、移送費(生活保護通院費)問題については、北海道滝川市で発生した不正受給(2年間に2億3000万円)を理由とした支給基準の厳格化に対しては、 運動の成果により、6月10日付で、桝添厚労相が事実上の撤回をしたことが報告されるとともに、移送費の利用自体が、まだまだなされていないことから、今回の事件をきっかけにして、更に、活用することが話されました。一方、自治体によれば、今回の事件をきっかけにして、移送費の軽要を事実上制限するような 動きがあることも報告されました。
さらに、若者をめぐるワーキングプア問題について、6月22日に集会が予定されており、主催者として活躍している参加者から、若者の現状について報告がされ、次回例会では、この問題をテーマにすることが確認されました。
3 第3回例会(予定)
日 時 2008年9月9日(火)午後6時30分~
場 所 きづがわ共同法律事務所会議室
テーマ (1)「母子世帯」をめぐる問題
(2)若者をめぐる問題 ワーキングプア問題を中心に