2009年4月22日、イナックスメンテナンス事件について、東京地方裁判所で組合側勝利の判決が出ました。
この事件は、(株)イナックスメンテナンスで主に出張修理の仕事をしているCE(カスタマーエンジニア)らが労働組合を結成し、団体交渉を申し入れたのに対し、会社が拒んだことについての争いです。労働委員会は会社に団体交渉に応じるよう命令を出しましたが、会社は応じず、東京地方裁判所に命令の取り消しを求める訴訟を起こしていました。これに対し裁判所が、団体交渉を命じた労働委員会の命令を指示して、会社の訴えを退けたのです。
CEは「業務委託」と書かれた契約書を交わして働いており、会社はこれを「請負契約であり、CEは労働者ではないから、団体交渉に応じる必要もない」と主張していました。しかし、以前プロ野球選手が労働組合を結成して交渉に臨んだ例のように、組合を作って団体交渉するのに、純然たる雇用契約でなくてはならない理由はありません。組合を結成できる「労働者」の概念は、かなり広いのです。
更に加えて、イナックスメンテナンス事件の場合には、実際の働き方からすれば、請負は偽装とも言えます。会社からCEに対する指揮・管理がかなりの程度なされていて、純然たる雇用契約に極めて近いものになっているのです。
組合を結成し、団体交渉をする権利は、憲法28条によって認められている、非常に大切な労働者の権利です。小林多喜二の「蟹工船」でも、虐げられた労働者が団結して横暴な使用者に立ち向かいました。団体交渉によって、労働者が会社と対等な立場で話し合い、労働条件の改善等をはかる、そのためのなくてはならない権利です。その権利を踏みにじり続けている会社の罪は大きく、早急に団体交渉に応じるべきです。
ことのはぐさ
2009.05.08 弁護士 古本剛之 | イナックスメンテナンス事件 勝訴判決