民主党による政権交代につかの間の期待をもったものの、日を追って幻滅していき、情けなさを経て、今や怒りに変わってしまいました。民主党政権に、的確な 政策を説得力を持って訴える力はみえず、かといって、執政をはやし立てる自民党のレベルの低さにも唖然とする思いです。
そんな閉塞状況のなかで、メディアに受けるような刺激的、右翼的な言辞を弄する政治家が中央政界にも地方政界にも続々と登場しています。
識者は、現在の日本の社会状況は、第二次世界大戦の戦争前夜の状況と似ていると指摘します。
そういうこともありヒットラーのナチス第三帝国の成立を少し勉強してみようと思い、ウイリアム・L・シャイラーの歴史ノンフィクション「第三帝国の興亡」 を読み始めました。戦前、ジャーナリストとして、ドイツに駐在にしていた著者が、戦後明らかとなった膨大な資料を駆使して記述した全5巻の大著ですので完 読には至っていません。それでも1、2巻を読むと、ヒットラーが権力を握る前後に限ってみても、ナチスの無法ぶり、その圧倒的な暴力と虚偽にみちた政治宣 伝には驚かされます。これほどだったのかと思ってしまいます。第一次大戦の敗戦国としてプライドを失い、天文学的なインフレと生活苦に陥っていたとはいえ、ドイツ国民はそんなナチスに快哉を叫んだのです。ナチスは当初は労働者の救済を掲げていたものの、実際には、大地主や資本家、軍部の支援を受けていました。ナチスは政権を掌握するや、社会主義者やユダヤ人や政敵を、暗殺し、処刑し、強制収容所をあちこちに建設しました。
悪魔というべきヒットラーがどのように権力を掌握したのかが、「第三帝国の興亡」の第1巻に詳しく記述されています。なによりも考えさせらるのは、ヒットラーは選挙で合法的に首相に選出されたということです。権力を握るや全権委任法を制定し、完全な独裁者となり、ヨーロッパ全土を戦争に巻き 込み、ホロコーストを行ったのですが、その出発点は、ドイツ国民によるナチス党への強い支持があったのです。
時の政権の政策が迷走したり、既存の政治家に対して不満が講じると、選挙民は、政策の是非ではなく、政治家のリーダーとしての「力量」に期待 をして閉塞状況を脱しようとします。まさに、ヒットラーは、一つの民族、一つの国家、一人の総統と国民をあおってその支持を獲得したのでした。バッハ、 ベートーヴェン、ブラームスを生んだドイツでしたが、その社会と国民性は、同時にヒットラーという悪魔を生み出したのです。
ドイツの最終的な運命については皆さんもご承知の通りです。
わが国でも、論理的な検証に耐えないような政策や、政策ともいえないような大言壮語をいって、支持を集めている政治家が、地方の首長(誰とは言わなくてもあの知事や市長さんです)を中心におり、メディアが囃子たてています。ちょっと待てと言いたくなります。
閉塞状況に陥った日本であるからこそ、国民が安心して暮らしていくために、主権者として、歴史に学び、長期的な理念や政策をきちんと検証する力を養うことが必要かなと思います。