NHKの朝の連続ドラマ「おひさま」が始まった。「女のくせに」と言われるのがイヤな主人公陽子の人生が展開する。舞台は昭和初期から始まる。
ところで今や、21世紀に入り、「女のくせに」は死語になりつつある。私が弁護士になったのは35年前の1975年。国際婦人年の年であった。「女のくせに」の批難の言葉はどこにでもあった。陽子さんが青春を送った時代の家父長制は、日本国憲法で否定されたが、社会はその尾を引きづっていた。
陽子の母は子爵の娘であったが、家を捨てて愛する夫に走った。そして、病弱な体ながら3人の子を産み、子どもを残して死んだ。
突然、長じた陽子の前に祖母が現れ、そんな母を非難すると共に、非難する自分を恥じた。祖母が語る子爵の夫に初めて「盾を突いた」(反抗した)事件があったのだ。子爵家は子がいなければ家はつぶれる。そこで、陽子の兄、次男を養子にもらおうとしたと言うのだ。ところが、少年期であった長男にそれを阻まれ、 目が覚めたと言う。
今から10年前、いわゆるDV法が生まれた。夫の暴力から逃げてくる女性の避難所の運営に関わってきた私は、DV否定の法律を実践する女性の力を信じる。「誰に喰わしてもろてんねん。俺に盾を突くから痛い目に合うんや。」という言葉は死語になっていない。
DV被害者Aさんは言う。「裁判をする中で日々に流されないで、自分らしく生きることの大切さを知りました。」と。
ことのはぐさ
2011.05.02 弁護士 渡辺和恵 | 「女のくせに」と「盾を突く」