相続手続において、借金の扱いには気を付ける必要があります。借金については、相続人間で誰か1人が払うという協議ができても、対外的には効力がなく、全員が按分して支払い義務を負うことになるからです。
以下の例を元にご説明します。
父親が亡くなり母親と兄弟が相続人となるケースです。父親には事業のための借金がある一方で、若干ですが事業用資産がありました。しかし、兄が父親の事業を引き継いで仕事をしており、父親の借金も支払っていく意向で、弟と母は特に財産を相続しようとは思っていないケースでした。
相続が発生した時に注意して頂きたいのは、相続人間では遺産分割協議によって、兄がすべての財産(マイナスの 財産を含めて)を相続する約束ができたとしても、対外的にはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産もそれぞれの相続人が一旦相続することになるということです。兄が事業を承継し、父の借金を支払うと言っていても、それだけでは相続人である母や弟も債権者との関係では、支払義務を免れないのです。ですから事業を承継しない母や弟は、自分について相続が開始したことを認識してから3ヶ月以内に相続放棄の手続きをとっておく方が無難です。債権債務の詳細が把握できない場合、その調査のために必要であれば相続放棄の期間は申請すれば延長もできます。