誰かが亡くなって相続が発生すると、亡くなった人は所有権の主体とはなれませんので、概念的に相続人らは一定の割合で遺産である不動産を共有することになります。その上で、遺産分割協議等で分け方が決めることになるのです。
例えば、AとBが共有している土地があったけれど、Bが亡くなってCとDが相続人となった場合、AとC、Dの共有関係を解消するにはどうしたら良いのか。更に、Aも亡くなってE、FがAの相続人になったが、CDEFの共有関係を解消するにはどうしたらよいか。CD間、EF間は本来、遺産分割協議・調停・審判の問題ですが、元々のAとBの間は共有物分割訴訟の問題になります。
この点、改正民法は258条の2に特則を設け、相続が開始してから10年経過した場合、遺産分割調停・審判を経る異なく、直ちに全体を共有物分割請求訴訟の中で一回的に解決する方法を認めました。この場合、特別受益(法903条)や配偶者居住権(民1028条以下)といった規定は適用されず、不動産そのものを分割してしまうか(現物分割)、共有者の一部が他の共有者に代償金を支払う形で分割する方法(価格賠償)、競売による分割方法によるかが決められます。
確かに、先の例で言えば、DがBの生前多額の贈与を受けていた様な場合、Cからするといきなり共有物分割訴訟で処理されてしまえば、Dの特別受益を主張する機会を奪われることになります。ただ、遺産分割協議をされないまま放置されている不動産は、必ずしも上記のような事情を抱えているとは限らず、ただ漫然と放置されているような事案も多数あります。そのような場合にCD間の協議が整わない限り、Aとの共有関係の解消ができないとすると迂遠とも言えます。
そこで、共有物分割請求訴訟を起こされた側は、2か月以内に異議を述べ、遺産分割調停手続を経るよう要求することができますが、そうでなかった場合、共有物分割請求訴訟の中で一回的に共有状態の解消を図ることができるのです。この制度の創設は、多くの所有者不明土地の解消に大きく寄与することになるでしょう。
所有関係が複雑になってしまった共有不動産がある場合、一度、同条による解決を検討してみてはいかがでしょうか。