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2024年4月から相続登記の申請義務化が始まりますが、それに先立ち、2023年4月から、登記手続の一部が簡略化されました。
以下、X(被相続人)が亡くなり、遺産の中にX名義の不動産があり、法定相続人はA、B及びCの3名という事例で、「相続人に対する遺贈登記手続の簡略化」を紹介します。
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Xが、遺言により当該不動産をAに取得させたい場合、「Aに相続させる」という文言になっていることが多いと思われます。
この場合、Aは、遺言を原因証書として、一人で相続登記申請をすることができます。
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ところが、中には「Aに遺贈する」という文言になっていることがあります。
この場合、これまでの取扱いでは、Aは一人で遺贈登記申請ができず、すべての相続人又は遺言執行者との共同申請をすることが必要でした。
遺言で遺言執行者が指定されていれば、さほど問題は生じませんが、遺言執行者が指定されておらず、かつ、B又はCの協力が得られない場合、Aは家庭裁判所に遺言執行者選任申立をし、選任された遺言執行者との共同申請をする必要がありました。
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その不都合を解消するため、今回の改正により、「Aに遺贈する」という文言であっても、Aは一人で遺贈登記申請ができることとされました。
ただし、この遺贈登記手続簡略化は、法定相続人(A)が遺贈を受ける場合に限られ、法定相続人ではない第三者(たとえばD)が「Dに遺贈する」という遺言に基づき遺贈登記をするには、Dは一人で申請できず、従来どおり、法定相続人全員(A、B及びC)又は遺言執行者との共同申請が必要であることに注意してください。