近年、未公開株式の詐欺被害事件が後を絶ちません。A社がB社の未公開株式の購入を勧誘するもの、B社もA社と共謀して販売しているもの、A社が自らの未公開株式の購入を勧誘するもの、投資事業有限責任組合を組成して、売買ではなく組合形態での加入を勧めるもの等と様々です。勧誘の際には、公的機関を装ったり、あたかも近々上場して株式価値が上がるかのように装ったり、有利な配当や買い戻しが保証されているものであるかのように説明したりして、消費者心理をついてきます。しかし、実際に購入された未公開株式の発行会社は全く実在しない場合もあれば、休眠会社であったり、およそ配当可能性のない全くの赤字会社であったりするのです。
最近、刑事事件に発展したものもいくつか報道されるようになりましたが、もっともらしいパンフレットを簡単に作れる上、社会全体の先行き不安感を反映してか収まる様子はなく相変わらず形態を変えて被害を拡大させているようです。
そもそも、非上場会社の株式には、上場会社と異なり、客観的な価値を担保できる制度がありません。株式の流動性も低く、実際に会社が買戻しに応じる保証もありませんし、そうした場合、およそ経済的な価値が付くことはないと思った方が良いでしょう。
まず、株式の購入の取次ぎ、代理などを行うことができるのは、証券取引法及び証券業協会の自主規制により、内閣総理大臣の登録を受けた者のみで、登録を受けた者も、未公開株に関しては「グリーンシート銘柄」しか取り扱うことができません。A社が実在する会社か否か、登録業者か否か、B社は実在する会社か否か、B社に上場の予定があるのかなどを調査する必要があります。
B社が全く実在しない会社であるような場合、その株式の販売は詐欺罪を構成すると考えられます。更に、B社株を販売したA社に証券業登録がなければ、証券取引法違反になる犯罪行為、公序良俗違反行為として、売買契約そのものを無効とし、代金の返金を求める余地があります。なお、投資事業有限責任組合の名の下に加入を勧誘する手口にしても、多くは完全な組合契約を構成するものではなく、登録を受けた者以外は証券業を扱えないという制限の潜脱行為に過ぎません。
他方で、株式の発行会社が自社の未公開株を販売すること自体、現在のところ証券取引法や証券業協会との自主規制の規制外になっています。それでも、上場予定がないにもかかわらず、上場予定があるかのように装って自社株を販売したり、配当等が確実であるかのように説明していたような場合は詐欺罪になりますし、売買契約を詐欺取り消して不当利得返還請求、詐欺を理由とした損害賠償請求も可能です。
日弁連でも法整備を求める意見書や取締りを申し出ていますが、ともかく、うまい話にはのらないことが肝心です。しかし、うっかり契約をしてしまったのであれば、速やかに弁護士に相談されることをお勧めします。