ことのはぐさ

2012.05.30 弁護士 古本剛之| 児童虐待問題についての弁護士会交流勉強会


 先日横浜で、大阪、横浜、東京、沖縄の弁護士が集まり、児童虐待問題についての交流勉強会を行いました。これは、大阪弁護士会と横浜弁護士会の間で10数年前から始まったもので、児童虐待問題に取り組む弁護士が年1回集まり、情報交換や法的問題についての意見交換・議論を交わす勉強会です。

 今でも児童虐待問題には児童相談所が第一線で取り組むものですが、かつては児童相談所が孤軍奮闘し、弁護士の支援はほとんどありませんでした。虐待を受けている子どもを親と一旦引き離して保護する時に、家庭裁判所の審判を受ける場合がありますが、児童相談所は法的な専門家ではないのに、弁護士などによる支援もなく苦労していたそうです。この頃は世間でも児童虐待事件自体があまり明るみに出ず、今ほどには社会的関心がもたれなかったように思われます。
 1990年代になってから、児童虐待の問題に気付いた一部の弁護士が「これは放っておけない」と取り組みを始め、児童相談所の支援も行うようになりました。その先駆者となったのが、大阪と横浜の弁護士でした。今では、弁護士による児童相談所への支援は、全国的に広がりを見せています。
 その後も、大阪と横浜の弁護士は、この交流勉強会などを通じて研鑽に努め、児童虐待問題への取り組み・専門性について全国でもトップレベルを維持するよう努力しています。また、近年では、福岡弁護士会や沖縄弁護士会も参加し、広がりを見せています(この勉強会以外にも経験交流の場はありますので、他の弁護士会がこの問題に取り組んでいないということではありません)。

 児童虐待の問題は、「一部の特殊な家庭」の問題ではありません。「虐待した親が悪い」といって罰すれば済むものではないのです。その裏には、貧困や社会制度の不十分さ(保育所の不足や母子家庭への支援の貧弱さなど)が児童虐待へつながる要因として潜んでおり、社会全体における問題なのです。個々の児童虐待事件への対応も重要なのですが、社会全体の問題を解決しなければ、根本的な解決は図れないのです。


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