ペットには犬派、猫派、うさぎ派など様々な派閥があるらしいが、我が家がサワガニ派なったのは、4年くらい前からだろうか。今の子は二年目に突入した男の子だ。名前はカニさん。なんの工夫もない。
サワガニの良いところは、なんと言っても世話が楽ちんなところ、脱走にさえ気をつけりゃ、水はちょっとなんですぐ変えられるし、基本雑食だからコケみたいなのも食べる。ほうれん草のおひたしを作った時に余った鰹節をちょっと分けてあげるだけ。思いの外長生きだし、水替えサボってしまっても結構元気。小さな金魚鉢で動いている彼を眺めながら、ぼーっとお茶を飲むのも良い。
難点は必ずしも愛情の交換をする関係に至らないこと。
しかし、うちのカニさん、近所のスーパーで、「素揚げにしてよし、ペットにしてよし」というシュールな売り文句を掲げて一匹50円で売られていたもの。常に素揚げの危機と隣り合わせの彼に、こちらへの愛情表現など求めてはいけない。両手を上げて鰹節を受け取りに来てくれるだけで、彼と私の心は通じている。
得意技は、時よりこっそり脱皮して、「仲間が増えた!」と飼い主を驚かせること。娘が彼を床に落としてしまい足が一本もげた時も、その後の脱皮でしっかりリカバー。ね、すごいでしょ?
娘の友達はうちに遊びにくる度に、いつ食べるの?と非情な声をかけてくるが、彼はあくまでもペットであって食料ではない。
私の親は愛知の田舎出身であったので、子どもの頃は夏休みとなると祖父母宅から井沢に生息するサワガニを取りに行ったり、川で魚釣りをしたり時間を忘れて遊んでいた。そんな遠い思い出と共にあるのがサワガニだったのだけれど、スーパーで売られる時代になるとは驚いた。が、結構人気らしく小さいお子さん連れの方が、一匹二匹と買っていく。多分、ペットとして。連れていかれるサワガニ達を見送りながら、食べられるなよ、と心でそっとつぶやいている。