当事務所は昔から労働事件に強い事務所であることもあって、未払の残業代請求事件がよくあります。最近は「ブラック企業」という言葉もありますが、法的な根拠のない理屈を口実にして残業代を支払わない会社も増えているようです。
手口としては、「基本給に残業代が込みになっています。」とか、「定額の『残業代』を払っているので、残業が何時間であってもそれ以上は払いません。」とかいう場合があります。
このような「基本給込み」「定額方式」は、必要な残業代が払われていれば、有効な場合もあります。
しかし、このような場合でも、どこまでが基本給でどれだけが残業代になるのか、残業代が足りないことはないのかを検証できるように内訳を明示しなければなりません。ただ漫然と「基本給込み」「定額方式」となっていて、全く計算ができないような場合は、無効となる可能性が高いのです。
残業代請求をした場合に会社との関係が悪くなることを気にして、働いている間は請求せず、会社を辞める機会に請求されるケースもよくあります。この場合に気を付けていただきたいのは、残業代(賃金)の請求権は、2年以内に行使しなければ時効にかかって請求できなくなってしまうことです。残業代が払われない状態が10年以上続いていても、最近2年分しか請求できなくなってしまうのです。
残業時間を証明する手段が問題になることもあります。タイムカードがあり、正確に打刻されている場合は、これで証明できます。タイムカードがない場合、あっても実際に仕事を終わる時間とタイムカードを打つ時間がずれている場合(例えば、タイムカードを打った後で何時間も残業しているような場合など)は、実際に働いている時間を証明する証拠が必要になります。
例えば、仕事で送ったFAXやメールなど時刻の記録が残るものを残しておくとか、業務日誌に仕事を終える時刻を記入しておくなどして、証拠を残しておくことが必要です。会社の時計をバックに自分の写真を撮って残しておくというのもいいかもしれません。時刻を勝手に変えられない電波時計なら、なお良いでしょう。