2013年12月6日、多くの国民の反対を押し切って、特定秘密保護法案が参議院で強行採決の末可決され、成立した。
「特定秘密」が無限定に広がり、また永久に秘密にされるおそれがあること、「適正評価」の名の下にプライバシーを侵害する調査が行われること、秘密の漏洩だけでなくそれにアクセスしようとすることに対する過酷な処罰規定など重大な問題点をはらんだ悪法である。
歴史を紐解いても、沖縄返還交渉時の米軍用地原状回復費用肩代わり密約にせよ、米艦船の核持ち込み密約にせよ、密約が公になっても国民の利益が害されることは何らなかった。秘密にしたかったのは、米国の顔色を窺う時の政府である。国民に知られては反対運動が巻き起こり、政府にとって都合が悪かったのである。
外交や防衛上、ときに秘密は必要かも知れない。しかし、国民主権と民主主義を標榜する以上、秘密の範囲はやむをえないものに限定するべきであるし、一旦秘密指定しても解除しうる手続きを定め、一定期間経過後には公開して批判的検証の対象としなければならない。過去から教訓を学ばずして、未来を切り拓くことはできないからである。
与党は不安を訴える国民の声に耳を貸そうとせず、数の力で強行突破した。時間をかければかけるほど悪法であることが鮮明になり、国民の間に反対の声が広がることを恐れたのであろう。
悪法も法である。しかし、悪法はどこまでも悪法である。私たちは、今回の事態に怯むことなく、この悪法が社会の隅々に及ばないよう、新たに取り組みをしていく必要がある。
ことのはぐさ
2013.12.17 弁護士 森信雄| 歴史に汚点を残した特定秘密保護法の成立