労働者派遣制度の在り方を審議していた労働政策審議会の職業安定分科会需給制度部会は、1月29日、労働者派遣法の改正についての報告書をとりまとめて、労働政策審議会に提出しました。労働政策審議会は、同日、この報告書を受けて、業務単位での期間規制を労働者単位に改変し、労働者を入れ替えることで派遣を恒常的に利用できるようにするなどの労働者派遣制度の改正についての建議を厚生労働大臣に行いました。この通常国会にも労働者派遣法の改正法案が提出されようとしています。
しかし、このような労働者派遣制度の改変は、労働者派遣法の根本理念を覆すものといわなければなりません。
そもそも、労働者派遣制度は、直接・常用という労働の原則の例外として、一時的・臨時的な需要に限って用いられるべきものでなければなりません。そうでなければ、企業は、雇用の調整弁とばかりに、派遣労働者を必要なときだけ安価に使うことができ、他方で、派遣労働者は、労働条件を改善しようにも、派遣会社が派遣先から派遣契約を切られるのをおそれて、労働者自身も派遣先も何も言えなくなってしまう状況が続くからです。労働者派遣法は、こうした派遣労働者の使い捨てを防ぐために、同一の業種について労働者派遣を利用できる年数の上限を決めていたのです。
建議(報告書)は、年数の上限を業種単位ではなく、派遣労働者ごとに設けようとしています。つまり派遣労働者を入れ替えれば、ずっと労働者派遣を利用できることになります。
建議(報告書)は、年数の上限を迎える派遣労働者の雇用の安定を図る措置として、派遣会社が派遣先に直接雇用を依頼(=お願い)することを挙げています。しかし、派遣会社と派遣先の現実の力関係からすれば、そのようなお願いが受け入れられる可能性は絶無に等しいでしょう。
このほか、建議(報告書)は、2012年の法改正で先送りにされた製造業への派遣や登録型派遣を原則として禁止することも、見送ることにしました。
こうした労働者派遣法の規制緩和は、安倍政権になってから、産業競争力会議や規制改革会議などを通じて、繰り返し圧力が加えられてきました。厚生労働省は、労働者保護の法制度の趣旨をかなぐり捨てて、財界・御用学者の圧力に屈したのです。
リーマン・ショック後の派遣切り、そして「年越し派遣村」で問題となったワーキング・プアと呼ばれる労働者-働いてもまともな生活ができず、職とともに住まいも奪われるような異常な貧困の実態を省みず、新たにワーキング・プアを拡大しようとする労働者派遣法の改悪は、絶対に阻止されなければなりません。
ことのはぐさ
2014.02.07 弁護士 増田尚| アベノミクス雇用規制緩和を斬る② 派遣法改悪