土地や建物について、ご先祖様の名義のまま放置している、ということはよくあります。登記の名義を書換えしなくても、住み続けられますし、税金の請求もくるので不便を生じません。
ところが、いざ、売りたい、隣地との境界を確認する必要がある、遺産分割協議をすることになった、といった事態が生じると、ことは面倒です。名義移転を放置している間に、子孫が繁栄し、法定相続人がどんどん増えてしまっているからです。
子孫が30人から60人くらいになっていたり、江戸時代に生まれた人がいたり、出生の記録だけで死亡の記載がなく戸籍が途切れていたり、手続きを進めている途中で高齢者がお亡くなりになって相続人がさらに増えたりといった事例は少なからずあります。
が、こうした事案も、根気を出して戸籍などの資料を集め、家庭裁判所に調停・審判を申し立てれば、道のりは半分ちかくまで進んだといえます。あとの半分は、家庭裁判所と協議して方針を決めたり、関係者と連絡をとったり、登記を扱う法務局と協議したりして、なんとか解決することができます。
戸籍などの取り寄せ実費が結構かかり、解決まで時間もかかりますが、諦めなければなんとかなるものです。
ことのはぐさ
2022.04.01 弁護士 井上洋子|相続人多数の遺産分割協議事件