ことのはぐさ

2019.10.07 弁護士 岩田研二郎|シリーズ相続法改正③~居住用不動産の贈与を受けた配偶者の保護強化~


 シリーズ相続法改正第3回目の今回は、「居住用不動産の贈与を受けた配偶者の保護強化」について解説します。

1 特別受益の持ち戻しの原則
  贈与税の特例として、20年以上婚姻関係が続いている配偶者に生前に居住用の不動産を贈与しても2000万円まで非課税とする制度があり利用されています。
 しかし、民法903条は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受けたり、生前に贈与を受けた者があるときは、遺産として、その贈与不動産の価額を持ち戻し、それを含めて相続財産として配分を決めるとしていました。そうすると、妻が夫から生前に、住んでいる家はもらったけれど、相続では、特別受益とみなされ、配偶者の2分の1の相続分が既に贈与を受けている不動産でさきに充当されると、その他の預貯金などの配分を受けられないかその分が減額されるということになり、生活に不安をきたすという不具合が生じていました。

2 持ち戻し免除の意思表示の必要性と立証責任
 それを避けるには、被相続人が「生前に配偶者に贈与した不動産は、遺産相続では特別受益としない」という持ち戻し免除の意思表示をしておく必要がありました。そうすれば、配偶者は、贈与を受けた不動産は別枠にして、残された預貯金などの遺産について2分の1の相続分を主張できることになったのです。
 しかし、この持ち戻し免除の意思表示があったことの立証責任は配偶者にあるものとされていましたが、実務では比較的ゆるやかに認められていました。
   この立証責任を法的にも転換し配偶者に有利なものとしたのが今回の改正です。
「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対し、その居住の用に供する建物又はその敷地について遺贈又は贈与をしたときは、当該被相続人は、その遺贈又は贈与について第1項の規定(特別受益持ち戻し規定)を適用しない旨の意思を表示したものと推定する。」(903条4項)
  持ち戻し免除の意思表示が推定されるということは、被相続人が現実には何の意思表示もしていなければ、持ち戻し免除の意思表示があったと扱われるということです。
  配偶者居住権とともに、今回の改正の配偶者保護施策のひとつです。


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