昨年の国会で相続法などが改正されましたが、そのうちで市民にとって身近な3つの改正ポイントを紹介します。法律の施行日が、それぞれ異なるので、注意してください。
[介護者等の特別寄与料]
被相続人の介護や看病で貢献した親族(相続人以外、たとえば長男の嫁)は、現行法では遺言がない限り介護や看病に対しての報酬を遺産から受ける方法はありませんでした。特別寄与料の新設により、それを請求できることになりました。(改正法施行日 2019年7月1日)
[配偶者の居住権保護]
配偶者居住権は、所有者たる配偶者(夫)が亡くなっても、現在住んでいる家に、その配偶者(妻)がそのまま住み続ける権利です。現状でも、配偶者が遺産分割協議で自宅の所有権を相続すれば住み続けることは可能ですが、その分、遺産分割で得られる他の財産(たとえば預貯金)は少なくなります。新設された配偶者居住権を利用すれば、所有権は取得しないで、低い評価額の居住権のみ取得して自宅に住み続けることができ、評価額が所有権よりも減った分だけ、生活資金としてその他の遺産である預貯金をより多く相続できるようになりました。(改正法施行日 2020年4月1日)
[法務局による自筆証書遺言保管制度]
これまでは自筆証書遺言(全文直筆、作成日付の明記、署名押印)は自宅や貸金庫で保管するか、弁護士等に預かってもらうしか方法しかありませんでしたが、「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が新設され、封をしない自筆証書遺言を法務局(住所地、本籍地、所有不動産所在地)で保管してもらうことができるようになります。いままで必要であった死亡後の家庭裁判所での遺言書の検認手続も不要になります。
また被相続人の死亡後は、法定相続人や受遺者らが、①遺言署の保管の有無の照会、②遺言書原本の閲覧請求、③遺言書の画像情報による遺言書情報証明書の交付請求ができるようになります。
そして、一人に閲覧等をさせたときは、法務局は、速やかに,遺言書を保管している旨を遺言者の相続人,受遺者及び遺言執行者に通知することとなっています。(改正法施行日 2020年7月10日)