この男性は、年相応に物忘れはありましたが、概ね会話をすることが可能な状態でした。医師の診断書によると、保佐相当、重要な財産の処分など援助が必要ですが、今のところ自分の財産を管理することは可能であるとのことでした。自宅での生活を希望していましたが、近しい親族も高齢化しており、周囲にキーマンになってくれる人は見当たりません。
私は、この方と相談の上、裁判所に保佐開始の申立てをしました。預金管理等はできる状態でしたが、不安もあるようでしたので、保佐人となる私に預金の管理に関する代理権をつけて貰うことにしました。
この男性、当初は預金通帳からお金を出金することはできる状態でしたので、近所の金融機関で生活費管理用の預金口座を開設して貰いました。この口座のキャッシュカードは私が所持し、この男性には通帳と届出印を所持して貰うことにしました(男性の方でキャッシュカードを使いこなすのは難しいようでした)。そして、定期的に私がキャッシュカードを使ってこの口座に生活費を入金しては、男性に連絡し、男性が自分で預金を出金して日常品の購入をすることになったのです。急にお金が必要になったとしても、男性は事務所に連絡を入れてくれましたので、すぐに必要なお金を送金することで対応できました。
私は定期的にこの男性の家に行き、きちんと通帳の管理ができているか、その他に困り事がないか確認をしておりましたが、数年経つとこの男性は、通帳の置き場所を忘れたり、出かけていってお金を下ろすこと自体が難しくなってきました。
そこで、私は、担当ケアマネと相談をし、自宅に専用の金庫を置くことにしました。ヘルパーとケアマネ、私は金庫の暗証番号を把握しています。金庫の中には管理簿と領収書を設置。私は定期的に、この金庫に必要な生活費と予備のお金を入金に行きます。ヘルパーさんは、金庫からお金を出した場合、管理簿に領収書を添付して使途を書いて行きます。男性には月2回に分けて、私とケアマネから手持ちの生活費を手渡しすることにしました。急にお金が必要になった場合は、男性から私に連絡が入りますので、ケアマネ、ヘルパー、私の誰か動ける人が急ぎその金庫の中から予備のお金を出金して、この男性に渡すのです。
このような生活は、この男性が、自宅での生活が困難になるまで続けていました。その後、この男性は、施設入所を経てお亡くなりになりました。大変ではありましたけど、可能な限り自宅で生活をしたいというご希望に添うことはできたかな、と思っています。
【プライバシー保護のため、実際の事案を一部変えてあります】