地下駐車場を借り、自動車を駐車して利用していましたが、集中豪雨が発生して地下駐車場が冠水し、自動車が水没して廃車をしなければならなくなりました。後で分かったことですが、この地下駐車場は、過去10年のうちに6回も浸水被害が発生していたそうです。賃貸借契約をする際には、そのような説明は賃貸人側からはありませんでした。廃車になった自動車の損害について、賃貸人に賠償請求をすることはできるでしょうか。
賃貸人は、目的物を管理しているのですから、どのような状態であったのかをよく知っていますが、賃借人になろうとする者は、そのような事実関係を知りうる立場にはありません。また、一般に、不動産の賃貸借は、生活や営業などに使用するものであり、不動産賃貸業者は、このような重要性に照らし、目的物である不動産について正確な情報を提供すべき信義則上の義務を負っているというべきです。特に、賃借人が消費者であり、賃貸人が事業者である場合には、消費者である賃借人が契約内容を理解できるよう必要な情報を提供すべきです(消費者契約法3条1項)。
これらを踏まえると、不動産を使用する妨げとなるべき事実関係については、その内容によっては、賃貸借契約をするかどうかの判断に重要な影響を与えるものといえ、賃貸人が、そのことを知っていたか、あるいは、容易に知ることができた場合には、賃借人に、説明すべき信義則上の義務を負っており、このような説明をしなかった場合には、不法行為による損害を賠償すべきです。
損害の範囲は、説明義務違反という不法行為と相当因果関係を有するものが含まれます。事前に説明がなされていれば、賃貸借契約をしなかったと考えられるのであれば、契約に際して支出した費用などが、これに当たります。自動車が水没して廃車となったことによる損害も、相当な範囲に含まれるといえるした裁判例(名古屋地裁平成28年1月21日判決・判例時報2304号83頁)もあります。