ことのはぐさ

2024.12.04 弁護士 峯田和子|令和6年5月家族法改正で変わること


■養育費の先取特権と法定養育費制度の導入

 父母が離婚する際に養育費の取り決めができているケースは50%にもなりません。取り決めをしない理由としては、非監護親に支払能力がない、DV・モラハラなどによりお金をもらうことで接点を持ちたくない、など様々です。今回の改正によって、取り決めがされていない場合でも監護している親(監護親)は、法務省令の定めによって算出された法定養育費を請求できるようになり、先取特権が認められることになりました。

 

 しかし、それで十分といえるかというと、疑問を持たざるを得ません。現在、政府において検討されているのは、あくまでも債権者(監護親)の側で差押手続をとるということを念頭に置いています。その手続の簡略化は進められるようですが、あくまでも差押の対象財産を調査可能であることが前提となるでしょう。逃げ回る債務者(非監護親)を補足する負担はあくまでも、債権者(監護親)が負うことになる様です。しかし、果たしてどれだけの監護親がそのような手間・時間を掛けるだけの余裕を持っているでしょう。
 

 ドイツやフランス、スウェーデン、フィンランドといった国では国が養育費を立替払いし、国が債務者(非監護親)に対して求償債権を持つようにしています。養育費を支払わない非監護親に対して運転免許やパスポートの取得・保持の制限をかけたり、専門的・職業的免許の取り消し、税金還付金との相殺、宝くじ賞金の没収など、色々なサンクションをかけて、義務の履行確保を図る国もあるようです。監護親と非監護親の関係が上手くいかず離婚に到ったとしても、子どもの養育に関する費用負担は影響を受ける話ではないはずです。履行を確保する方策について、今一度検討されるべきではないのかと思います。

 

■親子交流について

 新法では、婚姻中別居の場合の親子交流について、こどもの利益を最優先に考慮した上で、父母の協議により定めることとし、協議できない場合、家庭裁判所の審判等により定めるものとされまました。更に、裁判所の積極的な介入が予定されているようです。
 

 実務においては、調査官の主導により家庭裁判所内のプレイルーム内で面会を試行し調査官が報告書を作成すること以外に、双方に代理人弁護士がついていると裁判所外で試行的に面会を実施し、結果を踏まえて改善点などを持ち寄る試みがされています。今回の改正によって、裁判所が、子の監護に関する処分、いわゆる「親子交流」を決める手続において、親子交流の試行的実施を促すか否かを検討し、促す場合には実施の条件(日時、場所、方法等)を決めたり、約束事項等を定めることができるとされ、裁判所外での試行面会に裁判所が積極的に関与してくることが予定されています。弁護士が代理人でついていない事案でも、裁判所の関与を受けて、当事者には対応することが求められるでしょう。


 しかし、親子交流の実施については、父母の間に信頼関係が無く高葛藤であるからこそ争いになっているともいえるわけで、実際に双方の不信の原因を紐解き協議をまとめる作業は非常に多くの労力を要し、繊細な作業になります。海外においては、親子交流について支援組織が多数あり、公からの補助金や寄付金などで運営されているようですが、日本ではそうした支援組織が乏しく、選択肢が限られているのが実情です。果たして、家庭裁判所にそれ程の作業を担えるのか、法施行までの2年程度でまともな支援組織を育成できるのか、「Viva親子交流!」の謳い文句の下で紋切り型に親子交流を推し進めていた時期に逆戻りしないだろうか。親子交流の在り方に苦悩する当事者に関わる身としては、現在の議論状況に懸念を抱かざるを得ないのが正直なところです。

 

■財産分与請求権

 従来は、財産分与が離婚後2年以内に手続きをしないと、請求できなくなりましたが、改正法では、5年に延長されます(改正民法768条2項ただし書)。

 

 今回の改正法は、公布(令和6年5月24日)後2年以内に施行されます。ガイドライン等詳細は今後詰められていきますが、注視が必要です。


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