なんらかの権利関係の相手方が所在不明で、処理ができなくて困るということがあります。
例えば、駐車場を人に貸していたが、車を置いたままいなくなってしまった。親が亡くなり相続手続きをしなければならないが、きょうだいの1人と連絡が取れない。そういうケースで話を進めるためには、どうすればいいでしょうか。
まずは、所在の調査をきちんとすることが前提になります。弁護士に依頼されれば、戸籍や住民票の調査ができます。調査をしても所在が不明の場合、次のような手段が考えられます。
1 公示送達
相手方が所在不明のまま、訴訟をする方法があります。駐車場を貸していたケースのような場合には、明渡請求の訴訟をして、強制執行することで、明渡しを実現できます。
ただ、この場合、残されている自動車などは、別のところで保管しておくか、差し押さえて競売にかけるなどの手続きが必要になります。そうではなく、自分で買い取りたいというような場合には、この方法では実現が困難または迂遠です。
その場合に、特別代理人や不在者財産管理人を選任してもらうことで、買い取りが実現できる可能性があります。
2 不在者財産管理人
これは、所在不明の人に代わって、その人の財産の管理・保存をする制度になります。家庭裁判所が選任し、監督することになります。
相続人の1人が所在不明の場合に、その相続人の不在者財産管理人を選任してもらい、遺産分割をすることが考えられます。
3 相続財産清算人
自分の父母あるいは祖父母の世代に土地を購入したけれども、登記が前の持ち主のままになっているケースがあったとします。前の持ち主に登記移転を求めたいと思って調べたところ、本人は亡くなっており、相続人もいないということがわかりました。
このような場合には、家庭裁判所に相続財産清算人を選任してもらい、その清算人相手に登記移転を求めるという方法が考えられます。
以上は、大雑把なイメージをご説明しましたが、実際上の条件、メリット・デメリットがいろいろとあります。
不在者の事情、財産の状況、どのような解決を志望するか、などに応じて、執るべき手段を検討していく必要があります。
なお、共有物の一部が所在不明の場合や、所有者不明土地の管理の問題については、下記のような制度もあります。