今年令和6年7月3日、最高裁判所は、昭和23年に制定された旧優生保護法(今はありません)で定められていた強制不妊手術に関して、被害者に対する国の賠償義務を認め、旧優生保護法が憲法違反であると宣言しました。
ところで、この旧優生保護法の不妊手術は、本人や配偶者が「遺伝的精神変質症、遺伝的病的性格、遺伝性身体疾患または遺伝的奇形を有しているもの」の場合だけでなく(この場合も当然、強制不妊手術は違法です)、「本人または配偶者の4親等以内の血族関係にある者」に同様の状態がある場合も不妊手術の対象としていました。4親等というと、上は曾々祖父母、曾祖父母、父母、両親、祖父母のきょうだい、両親のきょうだい(おじおば)、いとこ、兄弟、甥姪、甥姪の子のすべてが含まれます。これらの人に上記の障がいがあったとき、本人(私)は、不妊手術を行うことの適否に関する審査を、都道府県優生保護委員会に審査を申請する義務がありました(昭和27年改正)。
申請が義務であり、かつ、不妊手術をされる可能性があるとすれば、家族に障がい者がいる場合は、親戚一同でその存在を必死で隠したことでしょう。縁談にあたっては相手方に障がい者がいないかを確認したことでしょう。障がい者は社会から隔離されたり、外出を制限されたり、行方不明者として扱われたり、適切な支援を十分受けられなかったことでしょう。本人にとっても家族にとっても残酷で悲惨な話です。
このような差別的取り扱いの原因は、個々の市民にあるというよりも、旧優生保護法を制定した国にあると思わざるをえません。国が法律で差別的な取り扱いをしていたから、その適用を恐れて、市民は障がい者を犠牲にして防衛に走ったのだと思います。
今回の最高裁判所判決を読んで、旧優生保護法の内容を知り、かつ、訴訟当事者の状況を知って、とてもやるせない思いです。
国の罪は重いです。国が差別を規定して、勧奨するとき、その弊害はとても大きいです。