以前のクーリング・オフはハガキなどの書面で通知をする必要がありましたが、特定商取引法の改正で2022年6月から、メールやファックス、また業者のウェブサイト上のクーリング・オフ専用フォームにより通知ができるようになっています。
オンライン、インターネット利用が日常的になった社会で、ハガキなんてほぼ使わないから、買物に後悔した時に返品・返金が便利になった!とも思われます。しかし、クーリング・オフができる販売形式なのかには注意が必要です。
クーリング・オフとは、もともと、不意打ち的な勧誘を受けて勢いで契約してしまったけど、後から冷静になって考え直すための一定期間、無条件で契約の申込み撤回や解除できる制度です。そのため、自宅に訪問されたり、店舗外の喫茶店に誘い込まれたり、キャッチセールスで捕まって契約してしまったような「訪問販売」、電話で勧誘を受ける「電話勧誘販売」、エステティックや語学教室などの「特定継続的役務提供」、事業者が訪問して買取りする「訪問購入」では8日間のクーリング・オフ期間があり、いわゆるマルチ商法の「連鎖販売取引」、内職商法・モニター商法の「業務提供誘引販売取引」ならば20日間のクーリング・オフ期間があります。
しかし、「通信販売」の形式には、法律上のクーリング・オフ制度はありません。 事業者が決めた返品の特約に従うことになります。特約がなければ商品を受け取った日を含めて8日以内であれば、消費者が送料を負担し返品できますが、これはクーリング・オフとは別の制度です。
もともと通信販売は、消費者がカタログやチラシ、ウェブサイトを自ら閲覧して申込みをするような、消費者が主体的に広告にアクセスして内容を吟味して充分に判断できる形態が想定されていたからです。
しかしながら近年では、消費者が普段使っているSNSを通じて事業者からメッセージが送られてきたり、SNS上の広告から申込みに誘導されたトラブルが多いそうです。過去に閲覧したウェブサイトやユーザー登録情報等を基に個人の趣味や生活に適した広告を表示する「ターゲティング広告」が突然にポップアップされた経験をお持ちの方は多いでしょう。そのような広告によって、訪問販売や電話勧誘販売と同じように、不意打ちで即座に申込みするよう誘導されてしまうのです。
今後は、このような通信販売に対しても、規制や消費者保護の法制度が必要だと思います。