当番弁護士制度とは、逮捕されてしまった場合に、無料で一度は弁護士と面会できる制度のことで、全国の弁護士会が運用しています。暴行、傷害、窃盗、交通事故、様々な事件で逮捕された場合に、この制度を利用することができます。
最近、スーパーマーケットでの万引きを疑われた女性が現行犯逮捕されたものの、後に、誤認逮捕であることが判明した事件がニュースになっていました。このように、間違って逮捕される可能性は、弁護士である私を含めて、全ての人にあります。
逮捕されてしまうと、当然、自由に外出できず、携帯電話・スマートフォンも使えないので、誰にも連絡ができなくなってしまいます。そのようなときに、当番弁護士制度を使えば、警察から連絡を受けた弁護士会から弁護士が派遣されて、誰でも無料で一度は、弁護士と話しをすることができるのです。派遣された当番弁護士を通じて、家族に連絡をとってもらったり、会社に連絡をしたりすることなどができますし、今後、事件でどのような手続きが見込まれるかのアドバイスを弁護士から受けることができます。その弁護士を選任し、刑事事件の弁護人となってもらうこともできます。
この当番弁護士制度をめぐり、2019年の大阪で、ある事件が起こりました。
男性が、建造物侵入の疑いで、10月31日午前11時59分頃、警察に現行犯逮捕され、この男性は、警察署での取調べの際、遅くとも午後1時15分頃までに、当番弁護士を呼ぶように警察に伝えたにも関わらず、警察はすぐに弁護士会に連絡をしませんでした。その後、警察は、弁護士会の営業時間外である午後6時半過ぎに、ようやく当番弁護士の要請をし、翌日の午前10時30分頃に、男性は弁護士と話すことができました。
男性は、警察が弁護士会に対して、当番弁護士の連絡をすぐにしなかったのは違法であるとして、大阪地裁に民事裁判(国家賠償請求訴訟)を起こしたところ、裁判所は、男性の訴えを認め、国の賠償責任を肯定しました(慰謝料11万円の賠償責任)。判決文の中で、裁判所は、「逮捕された被疑者から当番弁護士の派遣要請を受けた大阪府警察の警察官はできる限り速やかに弁護士会にその旨を通知する義務を負う」と述べています。
当番弁護士制度は、逮捕された方はどなたでも利用できますし、ご家族からの連絡で利用することもできます。刑事事件は時間との勝負です。弁護士と話す機会が遅くなると、身体拘束される日数が延びてしまうかもしれません。可能な限り早い段階で、弁護士と話し、アドバイスを受けることが重要です。