『性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律』は、性同一性障害者について、法的に性別の変更が認められる要件の一つとして、3条1項4号には「生殖腺がないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること」を規定しています。
しかし最高裁判所は令和5年10月25日、15名全員の裁判官の一致で、この規定を違憲としました。
憲法13条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由、及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大限の尊重を必要とする。」としています。最高裁決定は、「精巣または卵巣を摘出する手術は、生命又は身体に対する危険を伴い不可逆な結果をもたらす身体への強度な侵襲である」として、憲法13条が保障している「自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由」に反するとしたものです。
最高裁判所はこの決定の4年前にはこの規定は合憲であると判断していましたが、4年の間の社会情勢の変化を認めて、このたびは違憲であると判断を変更しました。4年で判断を変えるというのはとても珍しいことですが、勇断と言えると思います。最高裁判所がこの決定に至ったのは、性別不合の方々の状況が広く社会の理解を得られるようになり、国際的な動きや、医学的知見も変化を促してきたことを背景としています。こうして人権の範囲がまた一つ確認されたことに、歴史が動いているということを実感させられます。