ある夜のことである。
趣味のオンラインゲームをしていると、不意にメッセージが届いた。
「おじちゃんあそぼー」
K君である。彼は、私の友人(弁護士)の甥っ子だ。
その弁護士の友人とは、オンラインゲーム仲間なのだが、いつからかK君も参加して遊ぶようになり、最近では1対1でも遊ぶようになった。
「おー元気そうだな。宿題やったかー?」「…あとでやる笑」といったボイスチャット(ゲーム内で使用できる通話機能)を交わしながら、一緒にゲームをする。K君は、たしか、3月に小学校を卒業したばかりだから、今は12歳くらいだろうか。
初めて一緒にゲームをした数年前、舌足らずで一方的にワーキャー騒いでいた彼も、今はハキハキと喋っている。「後ろから敵が来ているよ」「作戦変えた方がいいかもね」なんて、喋り方もだいぶ落ち着いてきた。
K君と遊んでいると、昔の自分にも、遊んでくれるおじさんがいたことを思い出す。
私が小学生だった平成初期、オンラインゲームなんてなかったので、学校帰りに近所で虫捕りして遊んだりしていた。そして、地方の田舎には、なぜか決まって、虫捕りがめっぽう上手い、「近所のおじさん」がいたのである。子供心にちょっとかっこよく見えて、どうやったらカマキリを上手に捕まえられるか、罠の仕掛け方などを教えてもらったりした。このおじさん、たしか、水切り(川の水面に石を投げて跳ねさせる遊び)もやたら上手かった。
最近、こういったおじさんは、きっとほとんどいないだろう。「近所のおじさん」でインターネット検索したら、不審者情報が1番上に来るはずだ。いや、そもそも、令和の子どもたちは、虫捕りや水切りで遊んでないかもしれない。みんな、家の中でゲームして遊んでいるのかも。
そういう意味では、オンラインゲームでK君と遊んでいる私は、「近所のおじさん」ならぬ、「ネットのおじさん」と言えそうだ。