ことのはぐさ

2023.09.20 弁護士 増田尚|シリーズ民法改正⑤ 相隣関係


 シリーズ民法改正の第5回は、「相隣関係」に関する規定の改正です。相隣関係とは、隣地所有者間に起きるトラブルについて規律しています(もっとも、相隣関係に関する規定は、地上権や借地権にも準用されますので(民法267条)、地上権者や借地権者も、相隣関係に関する規定に基づく権利を行使することができます。)。

 

■隣地使用権(民法209条)

 土地所有者は、①境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕、②境界標の調査又は境界に関する測量、③民法233条3項に基づく枝の切除のため、必要な範囲で隣地を使用することができます。ただし、住家については、居住者の承諾がなければ立ち入ることはできません(民法209条1項)。
 隣地使用権は、改正前は、「隣地の使用を請求することができる」と定められており、隣地所有者の承諾を得て、隣地を使用することができるにとどまっていました。しかし、隣地所有者が所在不明であるなど、承諾を得られない場合は、承諾に代わる判決を得なければならず、所在不明のため、訴状を送達するにも困難が生じるなど、時間を要する事態がありました。
 そのため、「隣地を使用することができる」と変更し、隣地所有者の承諾を得なくとも、当然に隣地を使用できるように、改正されました。
 もっとも、隣地使用に先立ち、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければなりません。ただし、隣地の所有者や使用者が所在不明であるなど、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りるとされています(民法209条3項)。

 

■竹木の枝の切除(民法233条)

 隣地の竹木の枝が境界を越えて伸びてきた場合、改正前は、隣地所有者に対し、枝の切除をするよう要求することができるとされていました。そのため、隣地所有者の所在が不明の場合には、判決を得て、代替執行という強制執行により枝を切除し、その費用を隣地所有者に請求するという、たいへん迂遠で、時間も費用も要する方法によらなければなりませんでした。
 そこで、改正法は、①竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、相当期間内に切除しないときや、②竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき、③急迫の事情があるとき、には、土地所有者が自ら切除をすることができることとなりました(民法233条3項)。
 また、隣地が数人の共有になっている場合、共有者は単独で枝を切除することができるとされました(民法233条2項)。これにより、切除の催告は、共有者の一人に対してすれば足りることになります。

 

■継続的給付を受けるための設備の設置権等(民法213条の2)

 改正により、必要なときに、電気、ガスや水道水の供給等の継続的給付を受けるための設備(ガス管や水道管など)を他人の土地に設置し、また、他人の所有する設備を使用する権利があることを定めた規定が整備されました(民法213条の2)。また、この権利を行使するために他人の土地を使用することもできます(同条第4項)。
 この場合でも、損害がもっとも少なくなるよう、設備の設置又は使用の場所及び方法を選択しなければならず(同条第2項)、当該土地及び設備の所有者に対し、償金を支払うほか、設備の設置や維持等に要する費用を負担する義務を負います(同条第5ないし7項)。
 他人の土地に設備を設置し、又は、他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければなりません(同条第3項)。


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