元々は、猫を飼う予定だった。動物全般に苦手意識はないけれど、犬が飼えるほど規則正しい生活を営むことはできず、「その点、猫であれば」と思った次第。ところが、子どもが猫アレルギーだった。保護猫カフェに連れていってみたら、真っ赤に腫れ上がってしまった。さすがにこれでは、猫飼いにはなれない。
そんな中で、よほど悔しかったのだろう。子どもが、「ハリネズミを飼いたい」と言いだした。もちろん、飼ったことなどないし、在来種でもないので生態が分からない。以来1年、子どもと共に図書館でハリネスミの本を借りて勉強し、ネット情報を検索し、ハリネズミカフェにて触ってみるなどの体験を積み重ねた。
ハリネズミという生き物は、ネズミというよりモグラに近い動物らしい。夜行性で、15センチ程度の体長なのに一晩で1~2キロも餌を探して動き回るという。驚異の行動力。YouTubeでは、ハリネズミが回し車を爆走している動画があったが、この動画に音をかぶせるとしたら、「天国と地獄」(オッフェンバック)か、「Runner」(爆風スランプ)くらいだろう。これは是非見てみたい。
かくして、我が家にやってきたハリネズミ。
が、夜行性のはずなのに、夜になっても姿が見えない。
まして回し車で走るところなど、見れたためしがない。
業を煮やした子どもはハリネズミが回し車に上ってしまった瞬間、降りられないように手で下車を阻止してみたが、ポテポテと少々歩いて見せただけで辞めてしまった。ちがう。私が求めていたのは、「爆走するハリネズミ」であり「驚異の行動力」だ。少々回した程度で、足を踏み外してこけるようなどんくさいハリネズミでも、食事に寝床から顔を出したと思ったら、さっさと寝に行くような怠惰なハリネズミでもない。
そこで、深夜であれば真の姿を披露してくれるのではと思い直し、休日前の夜中、ゲージのあるリビングに子どもと布団を敷き並べ、夜中の張り込みをやってみた。深夜薄暗いリビングに妻子ががん首を並べてゲージをのぞき込んでいるのだから、帰宅した夫はさぞ驚いたかも知れない。ともかく私たちは、張り込みを敢行し、今のところ睡魔に負けて朝を迎えては、敗北感を噛みしめている・・・。
世話を担当している子どもは、最近、「自分には大分慣れてくれた」と胸を張るようになった。もっとも、臆病な我が子は手袋なしでハリネズミを触れないが、私は威嚇音だしまくりで丸まるハリネズミだって素手で触ることができる。先住のサワガニさんのハサミに挟まれた時に比べれば、ハリネズミの針なんて可愛いものだ。防御一本の生き物に、積極的な攻撃能力などない。とはいえ、こんなところで勝ちを気取ってみたところで、あまり本来の目的には到達できそうにない。おーい、ハリネズミ、どこまでひっそり暮らすつもりなんだ。ため息をつきつつ、今日も夜中にゲージをのぞき込んでいる。