不動産(土地・建物)は、一人による単独所有でなく、複数名で所有している共有状態になっていることがあります。このとき、共有状態の不動産を売却したり、処分しようとするときには、共有者と話し合って決めるのが原則です。
しかし、他の共有者の中に、所在等が分からず連絡できなかったり、そもそも氏名も分からない者(以下、「所在等不明共有者」と言います。)が含まれることがあります。そのようなときには、話し合いを行うことができないため、原則通りの方法をとることができません。所在等不明共有者に対し、裁判を起こして、共有物分割の手続をとる方法で解決を図ることができますが、手間や時間、コストが必要となります。
このような問題があることから、改正後の民法では、簡便な方法が新設され、所在等不明共有者から持分を取得したり、所在等不明共有者の持分を譲渡することが認められました。改正民法262条の2,および同法262条の3に規定されています。
具体的には、共有者が、他の共有者の氏名を知ることができない、またはその所在を知ることができないときに、裁判所に対して請求することで、請求をした共有者に所在等不明共有者の持分を取得させたり、当該請求をした共有者に持分を譲渡する権限を付与させることが、裁判で認められるようになりました。請求をする裁判所は、共有となっている不動産の所在地を管轄する地方裁判所になります。この請求は、共有者が複数名いるときに、他の共有者の同意がなくても、単独で行うことができます。
ただし、持分を取得する場合、持分を譲渡する権限を付与されて持分を譲渡する場合、いずれにおいても、その持分の時価相当額を支払う必要があります。
なお、どういった場合に、所在等不明共有者に当たるかについては、改正民法に規定されていません。裁判所が個別具体的に判断することとなりますが、一時的に連絡がとれないに過ぎない場合などは、所在等不明共有者に当たらないものと思われます。
また、不動産の共有状態が、相続によって発生している場合には、相続開始の時から10年を経過しないと、上記の手続を行うことはできません(改正民法262条の2第3項、同法262条の3第2項)。これは、遺産分割の手続には時間を要することが通常であるため、相当な期間が経過する前に、新設された上記手続により共有状態を解消することを避ける規定です。相続人が多数にわたる事案においては、いつから相続が開始して共有状態となったのか、考慮する必要があります。
改正後の民法では、所有者不明不動産について、利用・処分をめぐり様々な手段が新設されました。不動産の共有状態等、現状を調査・分析したうえで、適切な方法を選択する必要があります。
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